――イメージをカタチに(・Image)――
index(索引)<concept(概念)<ルネサンスへ<2012-0509-1 市
南太平洋の暖かい、 湿気を含んだそよ風とともに、春がやってくる。 この季節、ほとんど一日中、風景全体がかすんで見える。 霧のような、それとハッキリわかる水蒸気ではないが、 もっと非常に薄い細かな水滴が、 空と地上全体を、まんべんなく覆っているのである。 景色がかすんで見えるのは、 大気中の細かい水滴が、景色をぼやかすからである。 この水滴が、太陽光を広く乱反射させて、 風景全体を薄明るく、そして白っぽい感じにしている。 しかし、夏のような眩(マブ)しさはない。 空中に漂うかすみ(霞)が、 太陽の直射を防いでいるからである。景色の色は薄い。 それはちょうど白いキャンバスの上を、 薄い純色(明清色)で、そっと撫でたような世界だ。 風景の色は、明るいというよりも薄く、 そして鮮やかなのである。朝の陽光の中を、 すりガラスを透して、世界を見ている感じだ。 物体、特に植物がそうだ。 新緑の色が、そもそも淡くて薄い色だということもある。 しかし、無機質の物体の色も確かに薄く見えるし、 また、穏やかで優しい感じさえする。 夏のような強い日差しも、眩(マブ)しい反射もなく、 景色そのもののコントラストが弱く、全体的に薄明るいのである。 そして、何となく白っぽい。そうしたことのすべてが、 目に見える風景全体を、穏やかで優しい感じにしている。 コントラスト(明暗)が後退して、 ものの輪郭の境界線がぼやけている。 影も消えている。 薄明るい、白いモヤ(靄)の中から、 鮮やかさだけがほのかに浮かび上がり、迫ってくる。 |