(  市)ルネサンスへ<2015-0306 同一性、



5:だれかが見ている。

無限に移ろう変化のさまを、
その変化の外側に住む人がながめている。
外から見ると、それはちっぽけで、たわいもなく、
ささやかなものに過ぎないのであるが、その中でのみ、
生き続ける人間にとって見れば、それは永遠で、
無限な、果てしなく巨大な世界である。
自分というのを、外から見たことがないのである。

だからそれを、知ることも、見ることも、
理解することもなく、気づくことも、
その必要もなく、それが何のことなのか、
まったくわからないのである。そうした記憶も経験も、
そうした感覚自体がないのである。

だからまた、不可解で不思議で理解に苦しみ、
わずらわしく、うっとうしく、めんどくさくて、
そしてなによりも気味がわるいのである。
気持ちの悪い、何かの勘違いとしか思えないのである。
それは、自分とは関係のない、未知の世界であって、
知る必要もなく、知ってもならない異質が支配する
世界なのである。

     戻る。             続く。


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