( 市)ルネサンスへ<2015-0724-a
3:虚構。
グラビアや雑誌、テレビ、そして現実の街中を行き交う 人々の顔付からは、陰(カゲ)が見えない。 その精神の内部には何もない。何も持たない。 彼女(または彼)が思ったことがそのまま現実なのである。 現実と彼女の心の中をへだてるものは、なにもない。区別もない。 そうした、ただひたすらに透明な世界。ケジメと区別のない世界。 自己と他者の区別がない。 自分だけの、誰にもけっして渡すことの出来ない人格とか、 自意識といったものもない。この世に生まれた途端、 そうしたものは、不必要で無用な汚物として抹殺され、 消し去られたかのようである。痕跡すら見当たらない。 そうした、内部になにも持たない、 ただひたすら純粋で透明な精神。 かくし事などなにもなく、それと同じく、 自分自身の心の中に、自分だけの プライベート・ルームなども持たない。そうした、 純粋に透明な精神。幼児がそのまま 大人になってしまったような世界。 それが女の顔に、そのまま表現されている。 たしかに、この上なく純真でかわいく、すなおで、 そして清潔で正直でもある。そうした純粋で透明な顔。 言いかえると、そこからは何も見えてこない、 そうした人間の「表情」なのである。 彼女の精神というのが、なにも見えない。 というより、本来あるはずの、 彼女自身の個性というのが、ないのである。 彼女でなければならない、 そうした彼女自身の「理由」が無いのである。 そうした、非現実的な世界。 だれもが勝手に、そうであるはずだ、 そうでなければならない、と思い込み、 信じさせられているだけの世界。 学校も新聞も政府もそうである。 すべてが、現実に背を向けた、 虚構の世界なのである。 |