(  市)ルネサンスへ<2015-1009 光の中、



2:入口。


逆光だけであれば、背後からの光によって、ものの輪郭は光の白さの中でボヤケて消えてゆく。そしてその表面は、暗い影となっている。コントラストを欠き、平板で濃淡の模様が消えて、ものの表面そのものが暗い影となって見えなくなっている。

そして、もしもこの逆光というのが、キリ(またはカスミ)の中でものを照らしている場合はどうだろう?物(被写体)と人間の目のあいだに、キリ(霧)が入ってくるのである。光は、逆光という方向性を失う。霧のなかで光が乱反射を繰り返し、様々に、すべての角度から、ものを照らし、映しだすのである。影が無い。

光が方向性を失う。それはつまり、ものが光の中で照らされている、ということである。光に照らされているのではなくて、光そのものの中に、ものが入っているという状態である。だから、不思議で、不可解、幻想的で、まるで空間の中にぽっかりと開いた、異世界への出入口のように思えてくるのである。

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