(  市)ルネサンスへ<2015-1009 光の中、



3:時間。


照射される太陽の光が、霧やカスミに妨(サマタ)げられて、乱反射をくり返して、太陽の光がその方向性を失うというのは、何か非現実的な世界なのである。ものが落とす影がなく、ものの表面にも陰影がない。ネガもポジもない。現実と非現実の境界がない。ものの表面の陰影が暗示する、内面の表情もない。外面も内面もなく、そうした時間が止まったような世界なのである。

太陽が時間と共にその位置を変え、ものに影を落とし、ものの表面に明暗の陰影(インエイ)をつくりだす。そしてまた、昼と夜がやってくる。これが、太陽の光がつくりだす方向性なのである。

陰影の濃淡とその移り行く変化のありさまは、時間という、時の流れの中を人間が生きている、ということを意味している。人間の暮らしそのもが、太陽が作り出す時間の流れの中で営まれている。だから、影がないというのは、どこか非現実的で、不思議な違和感を覚えるのである。あり得ないことなのである。

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