(  市)ルネサンスへ<2015-1120 「赤と白」



8:意志。


しかしそれも束の間で、早春にいっせいに咲き、
そして、いっせいに散ってゆく。まことに、慌(アワ)ただしく、
せからしい限りなのである。いつも忙(イソガ)しく、
せかせかと何かに追い立てられているのである。しかし、
そうした一瞬の輝きこそが、日本人には好まれるのである。
いさぎよいとか、ケジメがあるという意味でそうなのである。

反面、それは同時に、非常に残酷なことで、
古いもの、敗者、過去のものを、あっさりと、あまりにも手際よく、
あっさり、きっぱりと、冷酷なまでに忘れてしまうのである。
これが日本的な意味で、いさぎよいという意味なのである。
そしてそれは、日本が島国である以上、仕方のないことであって、
いさかいのタネを後世に残すことが出来ないという、
この空間的狭さにその理由と原因がある。そしてまたここでも、
自然条件と文化に基づく、同質性と均一性の原理が働いている。
だれもが同じ「日本人」なのだという、また、そうでなければならないという、
無意識の共通の価値基準が働いているのである。
これが日本という、私たちが生きている現実なのである。

だからこのような、無意識の世界の底から導かれてくる、
避けることも、逃げることもできない、必然的な傾向と指向性といったもの。
そして、その上で、これだけは絶対に守らなければならない、
不文律のオキテ、シツケといったもの。そして、その絶対的な意志の強制。
そうしたことが、この赤色でもって表示されるのである。

 戻る。                 続く。

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