( 市)<ルネサンスへ<2015-1211 続、生物的映像。
5:情緒的感覚。
視覚の持つ感覚的特性。感じる波長の範囲や明暗の幅、 さらに色彩の豊かさといったものは、たしかに人間と動物とでは おおいに異なるものである。そして同じ人間であっても、民族によって、 あるいはまた地理的条件や文化的特性によって、多少は異なって 来て当然と思えてもくる。 しかしまた、それらは、人間がもつ情緒的特性といったもの、 心理的で情感的な指向性、感覚の感受性の方向性という見地 からすれば、とるにたらない、どうでもよい、ささいなことのようにも 思えてくる。 視覚がもつ生物学的な機能や、その特性、範囲といったものは、 それが人間のものになることによって、はじめて、まったく別の意味を もつにいたるのである。これこそがもっとも大事なのであって、 人間にとっての本質なのである。すなわち、心理的・情的な 指向性を獲得するにいたった感覚として、そうなのである。 「情緒」などという自己の、内面的で精神的なあり方としての 感受性を有することになったのである。そして、それはなによりも、 肉体という感覚器官自体がもつ、情緒的特性といったもの、 肉体の情緒そのものなのである。 |