(  市)ルネサンスへ< 2016-0101  新、「ぼやける」。



3:調和。


視覚自体が視覚そのものを、とっても気持ちよく感じている。
なぜかうれしく感じられる、そうした気分や気持ちの状態である。
それは、感情とか思考といった何かを意識している状態ではない。
そしてまた、痛いとか冷たい柔らかいといった、純粋の外の世界の
印象でもなくて、あるいはまた、例えば、見える見えないといった、
純粋に物理的で無機的な印象でもない。

それはつまり、自分の意識と感覚の間に、それとは別の、
なにか他のものが入って来ている。自分の視覚のなかに、
なにか別の視覚が入ってきていて、それを通して世界を見ている。
あるいは、世界というのがそこだけが、いっとき、異質な空気に
つつまれていて、この異質な空気のなかで、自分と世界がかかわり
合っている、そんな状態である。

だからこれは、対象を失った心理状態、
意識されることのない感覚の、孤独で内閉的な独自の生理作用、
とでもいったものである。だから相手も、理由も不明のままで、
なにかにひかれ、目的も意図もないのに、うれしくなったり、
ほかのことが、すべてが、もはやどうでもよくなって、自分というのが、
何かにつつまれて、どっぷりと漬(ツ)かっていて、ただただ気持ちよく
思えてくるのである。意識があいまいで、神経がどんかんで、
感覚がにぶくなって行く、そういう状態である。

そうしたことは視覚に限らず、すべての感覚についても同じように
言えることであって、それはむしろ、五感のそうしたアンサンブル(調和)の
結果といえるものなのである。

 戻る。                 続く。

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