(  市)ルネサンスへ< 2016-0205 陰、~間接光の世界。



2:違和感。


だからそれは薄明りの下の、いわば、月あかりの下の、夜の世界の
ようにも見える。のっぺりしていて、奥行きがなく、なにもかもが弱い
光の中で、うっすらと、ぼんやり照らし出されている。それはまるで、
自分の心の中を見ているような、そんなぼんやりした、なにもかもが
あいまいで見えにくい世界である

光に照らされた景色(ないし物体)が、他の景色に影を落とすといった
ことがなく、景色表面の明るさの濃淡もあいまいでぼんやりしている。
ひとことで言って、景色に影の線がないというのは、非現実的な
印象を受けるのである。どこか別の世界、異質な、現実ばなれした
夢の世界のような違和感を感じてしまうのである。 

線がないというのは、見ている世界というのが、つながらず、
まとまりを欠き、ケジメがないということである。世界というのが、
意識の中で沈んでいて、眠ったままのように見えてくるのである。
景色の中で、色と色、カタチとカタチが違うというのは、たしかに
ハッキリとわかるのであるが、それらのあいだに境界線というのが
ないのである。カゲで区切られ、カゲで仕切られ、カゲでつながる
はずのカゲの「線」そのものがないのである。

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