(  市)<ルネサンスへ<2016-0226 かすみの風景



5:すなお。


では、いったいなぜ、そのようなことがおこるのか?
人間が、自分で自分を信用しなくなったからだ。
自分自身の肉体の感覚や、実際の経験をないがしろにして、
信頼しなくなったからだ。そのほうが生きてゆく上で便利だし、
ラクだし、そしてまわりからも支持され、もてはやされるからである。
だれからも歓迎されるし、喜ばされるからである。

自分で、自分というのをまったく信用していないのである。
自分で自分を殺して見失っているのである。自分の考えというのを
持たず、世の中に迎合して流されているだけの、存在なのである。
自分自身というのを見失っている。自分の考えというのが、
実際に自分が経験し、苦労して、自分で覚(オボ)えたものでは
ないのである。

自分自身にそうしたものがないから、他人から何を聞いても見ても、
自分のものとならないのである。自分のなかに、それを受け入れる
自分自身というものがないのである。これはまったく悲劇であり、 
絶望なのである。だから、非常に限りなく素直(スナオ)なのである。
疑うことを知らないのである。

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