( 市)<ルネサンスへ<2016-0226 かすみの風景
7:空想。
たとえば、音はどうだろう? スピーカーから聞こえてくる音はうつろである。 それは、音だけの世界である。現実に生きて暮らしている私自身とは、 異質な世界。切り離された音の世界、音だけの世界である。 それは、私のカラダで聞いているのではない。耳から伝わってくる音を、 頭の中だけで聞いているのである。これは感覚というよりも、意識とか 思考、あるいは夢に近いものである。 現実の裏付けが何もないからである。現実にないものを聞いている のである。だから、仮空の世界であり、現実から切り離された 別世界、空想の世界である。自分だけのうつろで孤独な、 からっぽの世界なのである。 現実の音というのが、音だけとして聞こえてくることは、絶対にない。 それは常に何かのきっかけを伴って聞こえてくるし、そしてまた、 音以外の他の感覚といっしょになって、聞こえてくる。 音とは、つまり、生きているのであって、それを聞く人間の生き方、 感じ方、そしてまた、その周囲との関係のなかで聞こえてくるので あって、それらと切り離せないのである。これが現実の音なのである。 戻る。 続く。 |