(  市)ルネサンスへ<2016-0325 目の中、



~3:<拡大する線>



薄灰色の、白く歪んだ線が、広がって、太くなり、開いていって、
そしてそのなかが変色変形していって、
それが何かの輪郭線の表面として映し出される。

たとえるならば、赤ちゃんが生れ出る瞬間であり、
暗い部屋の中で、薄明りのトビラが開いてゆく場面であり、
闇の中の裂け目から天上の光を仰ぎ見る瞬間でもある。
あるいはまた、足元の地面が揺れて裂けていって、
その暗い裂け目からオバケの手と目が見えてきて、
私をひきずり込もうとしている瞬間である。

薄灰色の白い線が裂けて、えぐれて、広がっていって、
その中から何かのイメージが現れてくるのである。
それは夢(または意識)の中での、情緒の急激な変化を意味
している。衝動とか感情とでもいったものである。
ただし自分でも、その理由がわからないのである。

それは、意識が求める象徴の世界である。
自分の情緒のなかにあって、それが求め指向する衝動が、
イメージとして象徴されている。だから、理由も、すじ道も、目的も、
そうした頭の中で考える、といったことがない。だから、
それが何かと問われても、わかるはずもなく、知りようもない。
直接的で、本能的な 衝動なのである。

だからまた、そうした象徴が、空間の中から歪んだ線とともに、
ほぼ同時に現れて、見えてくる。思考から切り離された、
純粋な衝動や、壊れそうな情緒のきしみといったものが、
直接、イメージとして現れるのである。

 戻る。                            続く。

<ルネサンスへ