(  市)ルネサンスへ<2016-0415 (続)早春、



~5:白い霞(カスミ)。


このような、市街地での霧の発生時は、たいてい風がない。
よどんだ動かないキリであって、キリがよそから運(ハコ)んで来られたもの
ではないことがわかる。市街地を覆っている空気そのものの中から、
キリが発生している。風があるとキリはすぐに拡散して消える。

それは、南の海で発生した湿った暖かい空気がもとになっていて、
それが北上して、日本列島の特に晴れた日などに、放射冷却で
冷やされ、まだ冬の残る冷たい地表面上でキリ(霧)となったのである。
だから、市街地で濃いキリが発生する日には、その日はほぼ間違い
なく晴天である。

そして、市街地でのそれは、やはりキリなのであって、カスミとかモヤ
ではない。短時間のうちに完全に消えてなくなるキリ(霧)である。
要するに、水分の供給源が大気に限られている、ということなので
ある。地上からの水分の供給がない、ということなのである。

そして、この地上からの水分を、常時、供給し続けているのが、
郊外の野原やたんぼ、川辺や、山々の谷あいなのである。
そしてこれが、春の霞(カスミ)なのである。
キリではなくてカスミとモヤなのである。

だからこの季節の郊外では、春になるといつもカスミがかかって、
かすんで見えるのである。これが、日本列島の春の情景なのである。
光も、水も、なにもかもが穏(オダ)やかで優しく、
のどかな春の日の情景なのである。

光が限りなく拡散していって、どこからでも、だれに対しても、
優しく包んでいる。空気も水も、なにもかもがそうなのである。
白いかすみのなかに、世界が映し出され、新たな生命が開き、
あふれてきて、世界を覆い尽くし始めるのである。

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