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8、文字。


だからまた、このようにして歴史というのが意識されてくる。つまり、何かしらの目的や理由といったものが、歴史という概念の前提にあるのである。すなわち、このような自分自身に対する目的や理由が意識されない世界では、「歴史」という概念が自覚されることがないのである。それでもあるとすれば、それは神話や伝承の世界なのである。いまだ歴史以前の世界なのである。時間という概念のない世界なのである。

それは文字の発明とも関係している。人間が何かを時間と場所を越えて伝える必要に迫られ、そうした状況に置かれたときに文字が発明されたのである。始め何かのサインに過ぎなかったものが、具体的な意志の内容を表す文字として表現されたのである。

そしてこのような、自らが置かれている状況に対する意識が、それを歴史として残す必要に迫られて、それを文字を通して表現したのである。だからまた、このような「状況」に置かれない限り、人間にとっての歴史は存在しないし、それが意識されることもなかったのである。

そしてここでいう「状況」とは、人間が自分を意識して、そして自らを祖先から子孫へと続く存在であると自覚したことを意味している。それはまた、自分たちを自然環境や他の動物とも違う存在であると意識し始めたことを意味している。


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