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3、マボロシ。


だからまた、それは物語にもなれず、また、それが誰のことなのかというのも、いつまでたっても見えて来ないのである。まったく自分でも不思議で不可解な、どこまで行っても得体の知れない情景なのである。

まるで、自分とは違う別の世界を覗き込んだ時のように思えてくるのである。いつまでたっても意味や理由といったものを見い出せないでいるのである。しかしまた、それもそのはずで、それは何らかの記憶の痕跡でもカケラでもないのである。

たしかに、そうだと言えばそうだと言えるのかも知れないが、それ以前に、やはりそれは、かつて自分が経験したような、いまとなってはただボヤけて「おぼろげ」な、そうした実際にあった何かの記憶の跡ではないのである。

それは、ひとことで言って、そうしたおぼろげな記憶の重なりといったものが、それだけで勝手に創り出した幻の世界なのである。

戻る。                続く。

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2019-0618-0624