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6、陰。


自分の肉体の感覚が、感覚だけで何かを記憶していて、そしてそれが思い出され呼び起こされているのである。それが果たして何のことなのか分からないまま、ただたんに「おびえ」とか、祈りとか、戸惑いとか、そうした自分でも訳の分からない気分や情緒、あるいは生理的な雰囲気として思い出されてくるのである。

それは言い換えると、現実とは別の、現実を無視したところにある、自分の中で失われた何かの記憶の痕跡が呼び起こされているのである。

だからまた、それは、カタチや現実の姿を喪失した、薄れゆくボンヤリした何かの記憶の痕跡、実体を欠いた陰のような存在に過ぎないのである。ちょうど月夜の下の、薄明りののっぺりした、何もかもが曖昧で捉えどころのない、ぼんやりした世界なのである。

戻る。                続く。


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2018-0725-0811