index < 日誌 < h感じ方< 「続、感覚」p6/


 
4 記憶。



感覚の感覚とは、意識以前の感覚だけで自己完結している、感覚の世界である。いわゆる「情緒」のことである。それは、意識とは直接の関係がないところでの出来事である。意識の届かない、感覚の感じ方の世界である。

だから、いつでもどこでも、自分の意図とか意識とは関係のないところでも、それは作用しているし、実際、無意識のうちに人間の考え方や行動に、それ特有の、非常に大きな影響を及ぼしている。そして、そうした特性を規制し条件づけているのは、歴史以前のところで民族が経験してきた記憶である。自然環境とのかかわり方や、文化といった、言葉にならない感覚の感じ方や、肉体のリズムとしての記憶である。

そうした、民族の情緒的特性といったもの、あるいはまた、他の言い方をすると、そうした自覚されざる肉体の記憶とでもいったものが、人間の本能や衝動のなかにあって、それが何かの祈りやあこがれとして現れたのが、民族の信仰や宗教といったもので、そうした情緒といったものが、暮らしのパターンやカタチとして定着したのが生産の様式であり、人間同士の関係として表現されたのが、社会システムといったものではないだろうか。

戻る。            続く。




index < 日誌 < h感じ方< 「続、感覚」p6/