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7、境界線上。



何かが始まり、移ろうとしていて、変化しながらも移行の過程にあるのである。これがまた、生きているということの意味であり、たしかな証明なのである。変化と移行のない、なにも変わらない世界というのは、生きているのか死んでいるのか、現実なのか夢の世界なのか、自分でもわからないのである。確かめることも出来ず、知りようもないのである。

だから始めに戻って言えば、何も変わらずそのままであり続ける空や土の色といったものは、変化のない無機質の世界であって、ほとんど気にもならない。あまりに当然の当然すぎる、どうでもよい色なのである。そして、この変わらないということ自体に何か意味がある色なのである。変わらないからこそ、どうでもよいのであって、そしてそれがどうでもよいからこそ、意味を持つのである。どうでもよいという意味である。

だからそれは、人間が見ている景色の背景にしかならない。あるいは、背景たり得る色としては、この変わらない色しかないのである。そうした、あたりさわりのない、どうでもよい、無機質な色なのである。

私たちは、そうした変化と、変化のない世界との間(あいだ)、生と死のあいだ、日常と非日常、現実と非現実とが互いに入り乱れて、混ざり合い、錯綜する狭間の世界、境界線上の世界を生きている。

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