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にもかかわらず、同じ現実の世界を生きているのである。つまり、それを意識し理解する自己の観念の世界が全然別のものになっているのである。自分というのが、自分でも知らない間に変わってしまっているのである。 常識や原理や必然性といったものがそうである。自己の内的同一性の基準がどこかで変わってしまっているのである。自分が自分であることの理由が別のものに変異しているのである。 だから、それに気づいたとき自分がわからなくなってしまうのである。だからまた、普通の人々はそれについて行けない。それは、人間にとって耐えられない恐ろしさなのであって、これ以上に恐ろしいことは、この世にないのである。自分が自分でなくなるのである。 自分がだれかわからなくなる。自分が生きて来たすべてが否定される。自分の感覚や自意識や人間関係、自分がうまれ育った記憶のすべてが意味のないものとして否定される。自分というのが、まるで、肉体という「入れもの」だけで、魂を失った生ける屍のように思えてくるのである。 |