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2、偽り。



自分以外のだれもいない世界というのは、ただただ疲れるだけで、怖くて恐ろしいだけの何もない世界ではないか。しかし、そうやって自分を確めようとしている。少なくとも僕は。そうするしかなく、それ以外に自分を確める方法がなかったのだ。僕は、ずっとそうであり続けたし、いまもそうである。

この世に生まれた時から現実が僕を排除し続け、それとも、あるいは僕自身が、現実を拒絶し続けて来たのである。と言っても、生きて行くためには収入が無ければならず、収入を得るためには現実を生きなければならない。

だから、拒絶、または隔離し続けて来たのは、僕の心の中の世界なのである。身体(肉体)は現実を生きているにも関わらず、心の中はいつも別の世界を生き続けてきたのである。そうやって自分を偽り続けて来たのである。

気づかないフリをして、それを避け、フタをして見えないようにして、自分で自分を偽って生きてきたのである。そうした自分を隠して見えないようにして、自分の記憶から消してきたのである。

なにも無かったかのように。ひっそり、こっそり、人知れず、そうした自分を殺して、埋(うず)めて、痕跡を消し去り、自分で自分を殺し続けて来たのである。まるで何も無かったように。

戻る。            続く。


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