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2、無い。



しかし、そんなことはどうでもよいことではないか。自分一人で思い悩んでいればそれで済むことなのだから。ならば忘れてしまった方がよいのである。

しかし、それでもやはり、何かが胸のなかで引っかかり続けるのである。胸の中のぽっかりと空いたすき間の真っ暗な奥の方から、いつも何か言葉にならない呻(うめ)き声みたいなものが聞えてくるのである。

自分の中で何かが欠けている。なによりも一番大切な何かが。まるで、えぐり取られてしまったかのように。歪んで、きしんで、張り裂けた地肌の奥から何かが溢れてきて、まわりににじんでいる。しかし、それが何なのか自分でもわからないのである。

ただただ戸惑い、おどろき、ためらっている。そして、それ以上に恐れ、おののき、おびえている。どうしたらよいのかわからず、どうにもならず、それがいったい何なのか自分でもわからないのである。

戻る。            続く。


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