index< 日誌< w目の中 < 「妄想の映像」p3/


 
2、他人の目。



霧の中や、月夜の薄明かりの下。暗がりや、物カゲなど。何かの輪郭のようなものが、不明瞭に見えて来て、なお、すぐには識別出来ない場合がそうである。薄れゆく記憶の中で、かすかなシルエットだけが見え隠れして、その正体がハッキリしない場合である。

こうした中途半端な状態が幻覚と妄想を引き起こしている。つまり、それと関係のない何かの模様から、脳ミソが勝手にイメージを作り始めるのである。そして、そのイメージの中に、誰かの、強烈な意志のようなものを感じてしまうのである。それが、目に見える現実世界のすべてを、意のままに動かしているように思えてくるのである。

そう思えてくるのは当然で、私たちは、そうした世界を生きている。これが、現実というもので、現実にあるもの、見えるものというのは、私自身の、この自分自身の目の中で見ているのである。そして、この目という感覚は、祖先から遺伝として、先天的に与えられたものであって、何万何億年の太古から生成され、形づくられて来たものなのである。

そうした意味で、人間の目の感じ方、見え方、そしてその脳内での処理方法、 そしてまた、その全体としての目の仕組み自体が、自分自身の意志とは別の事情から与えられたものだ、と言えるのである。

遺伝によって、先天的に与えられたものなのである。自分が獲得したものではなくて、初めから、自分の一部分としてあったものなのだ。それは、自分の意志の届かない、自分の意志ではどうにもならない世界なのである。そうした意味で、私の目は、他人の目なのである。

戻る。            続く。



index < 日誌 < w目の中 < 「妄想の映像」p3/