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2、かべ。


そうやって、それが無意識の世界のなかで自分を包み、迫ってくる。このような現実から切断された観念の世界のなかで、抽象化された印象が無意識のうちに、信号や何かの指図のサインのようになって、自分を突き動かして行くのである。

そうしたことが、なにか得体の知れない、見えない壁(かべ)や、影や、カスミのようにようになって世界を覆い尽くし、自分を包み込んでいて、そして支配している。まるで、そこから離れたところに自分の現実はないかのように。知らず気づかないままで、自分を包み、取り囲み、そしていざない、追い立ててゆくのである。

すなわち、このような現実の条件、自分が生きている現実の環境から離れたところに人間は存在しないのである。人間が生きている現実とは、まさにこのような現実の世界なのである。人間が生きて行動し、考え、生活し、空想する、そうしたことのすべてが、このような現実のなかで、また、このような現実を通してのみなされるのである。

戻る。                    続く。

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