index< 日誌 < v夢の中< 21-70「ウサギ2:きず」 |
そうだ、僕と横で運転している土方のオッサンは、ちょうど仕事の帰りだったのである。その日、どういうワケか昔に迷惑をかけた土方の親方(社長)のところで仕事をしていたのだ。そうだ、僕はとっても後ろめたいことがあったのだ。 昔、一人前の職人になった途端、僕はその会社を辞めた。その時、社長は非常に怒っていて、そして奥さんは泣いていた。だからいったん辞めた僕に、仕事など与えてくれるワケがないのに、優しく気づかいながら指し図していたのである。 だからそれが、どうしても不思議でおかしな感じがしてならなかったのである。僕はとても変な違和感と共に、ほんの少しの良心の呵責と、なにかしらの安堵を感じながら現場を後にしていたのである。 このような心の中の戸惑いと、ワケのわからない安堵といったものが、哀れでいまにも壊れてしまいそうな、それでいて、何かしら優し気な傷ついたウサギとなって、現れているのである。 |
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