index< 日誌 < v夢の中< 21-70「ウサギ2:きず」 |
そのとき僕は、それとなく頷(うなず)き、同意もし、納得したつもりであったが、正直なところ、僕の本心は決してそれだけではなかったのである。人間には、見過ごしても、許しても、見て見ぬフリをしてもならない、そうしたことがあると、僕の本心はそう言いたかったのである。 しかし、そこまで言うのは憚?はばか)られたし、もめるかも知れないし、わずらわしく面倒くさいし、また疲れることでもあったのである。だれだって、こういう自分の良心に係わることについては、ほじくられたくないのである。詮索されたくないし、自分の心の奧底には誰も入ってきて欲しくないのである。 だから僕はそのとき、それ以上言うのをためらわれたし、言うのを止めたのである。しかし、この途中で止めたといのが、僕の心のどこかで、何かしらの得体の知れない「わだかまり」みたいなものとして、残り続けていたのである。 |
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