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5、[う]という発音。


気持ちがふさいでいるとき、それはまた身体もふさいでいる。たとえば、身体をすくめたり、かがみこんだり、うずくまったり、うつむいたりするときは、「あっ」という発声はしないし、出来ない。少なくとも、そうした姿勢で「あっ」と声を出すためには、顔を上げていなければならない。「あ」というのは、自分の外の相手との関係なのである。

また、うつむいたときの発声は「あ」ではなく、「う」である。クチを最小限に開き、かつ、「うー」と長く声を引っ張るか、「うっ」と瞬間的に途切るかのどちらかである。つまり、ふさぎ込んで陰にこもるような身体の状態である。また、そうした状態から出てくる発声である。

だから「う」というのは、自分の中に対する関係として感じられている。意識は何かに向けられているが、相手に対してではなく、むしろ自分の中に向けらている。つまり、自らをふさいで閉じようとしている。呼吸する吐く息がそうだし、それ以前に自分の精神の状態がそうなのである。


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