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呼吸の動きというのは、本来、感情に伴うものなのであって、音楽は始めこの感情なしに、音だけで聞く者の呼吸を動かして左右する。そしていつの間にか情緒を、喜びや悲しみといった感情に導き、誘い出し、引きずり込んでゆくのである。 呼吸という身体の営みが知らぬ間に、自分でも気づかないままある感情へと、そうした心理的な状況へと自分を動かしてゆくのである。肉体が私の情緒を支配して動かし、そして見知らぬ世界へと自分を導いて行く。しかしこれは仕方のない、どうにもならない自分自身の肉体の営みなのである。 しかしまた、そうやって私たちは他人の感情や情緒といったものを理解し、知ることが出来るのである。自分の肉体がそれを知っていて、そしてそれを伝えてくるし、そして教えてもくれるのである。現実には何もないのに、好きな音楽を聴くだけで、泣いたり喜んだりするのは、このためなのである。 |
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